うちのメイドを疑うんですかっ!?

リゾバ

チェックインの客室には人数分の茶菓子を置くのが決まりでした。
茶菓子の箱は各コテージ端にあるリネン庫の棚に積み上げて重ねてありました。

最初のうちはチェックアウト部屋にお客さんが手をつけないで置いて帰った茶菓子を仕事中にかじる程度のかわいいものでしたが、だんだん私たちは図々しくなり、やがて客室をひとつ作り終えたらリネン庫に走って行って茶菓子の箱を開けて、12個入っていたらそれを一気に全部食べて、また仕事に戻るの繰り返しでした。
生まれて初めての肉体労働だったから、疲れてもいたと思いますが、1日かけて一箱食べる、くらいならそこまで問題にならなかったと思いますが、毎日私たちが大量に食べていたので、リゾートホテルの運営会社が「他のアメニティと比べて茶菓子の減りが激し過ぎないか?」と、下請けのビル管理会社の現場責任者のMさんを呼び出して問いただしたようなんです。

離島 リゾートバイト

Mさんは私たちからすると父親くらいの年代で、元々離島出身だけれど本土に出て長く仕事をして、Uターン就職で離島に戻った人です。
本土の生活の経験もあるからか、リゾートバイトの子たちのあしらいは上手でした。
指示が二転三転することがなく、思いつきであれやれこれやれみたいなことは言わない、そして一番立派だったのは、あれだけ性的に乱れた島の中で性的な間違いは犯さなかったことです。
それが当たり前のことなんですけれど、当たり前のことが当たり前に行かないのが離島の生活です。

お呼び出しから事務所に戻ったMさんは私たちを並ばせて「本社が茶菓子の減りが早過ぎると言ってたから、うちのメイドを疑うんですか?と言ってきたぞ。ただし、オマエたちも少し控えろ」と言われて話は終わりました。
言われた私たちもピーク時の3分の1くらいのペースで茶菓子を食べていましたが、本社もバカじゃない。

数日後、出勤すると事務所の大きなテーブルにネズミ獲り器が山と積まれていました。
私たちはネズミ獲りの山を4等分して、各コテージのリネン庫に設置しました。
夜間、ネズミがリネン庫に出ることは私たちも知っていましたが、ネズミは茶菓子は食べないんです。
個包装のビニールを破る知恵がなかったようです。



その代わり、ネズミは客室用の石鹸をガリガリかじっていました。
ネズミにかじられた石鹸はさすがに客室には置けないので、おさがりみたいな感じで寮に持ち帰り、私たちが使っていました。
ネズミ獲り器は石鹸を守るためには効果があったと思います。

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