リゾバをしていた時、たまに一緒に客室清掃に入った男性バイトのKさんがとても仕事の早い人だったんです。
Kさんは私たちを雇っているビル管理会社の寮には住んでいなかったので、仕事以外の会話をしたこともなくて、どう言う人なのかよくわかりませんでした。
私よりは5歳以上年齢が上な感じで、必要なことを話しかけると、ニコニコ笑顔で聞いてくれる感じの良い人でした。
同時に客室清掃に入ると、まだ私が拭きあげをしているうちに自分の仕事は終えて、客室を出たり入ったりとプラプラしていました。
他の男性と組むと、私が掃除機をかけ始める頃にようやくベッドメイクが終わる感じだったので、Kさんの速度は神の領域と思っていました。
けれどもある日、隣の島から応援に来たおばさんのパートさんが集まって大きな声でおしゃべりをしているのを聞きました。
「Kさんベッドメイクが早いよね。確かにあれは早い。チェックインでもシーツ交換はしないんだから」と、ひとりのおばさんが両手で払う仕草をしました。
シーツのシワを伸ばす真似なんでしょう。
これでKさんの仕事の早さの謎は解けました。
1泊5万円も取ってるリゾートホテルでこの扱いは、さすがにお客さんが気の毒と思いましたが、私がKさんに直接注意ができる立場ではないので、この話は右から左へスルーさせました。
長い人生の中のほんの3ヶ月(厳密に言うと2ヶ月もない)のうちの数回、組んで客室清掃をするだけの間柄の人に必要以上の関わりは持ちたくなかったんです。
リゾバの3ヶ月は、満期で辞める人がいれば、その補充で入ってくる人、せっかく来ても満期まで持たず逃亡する人、早い人では離島に来て数時間で「ムリ」となったようで、夕方の船で帰っていく人もいました。
満期ではなく辞めていく人は必ず祖父母を体調不良にしていました。
逃亡した人だけは今でも理解に苦しみます。
一応、事故がないかみんなで探したんです。
交番や病院もない島だから、自分たちでできることはやらなくちゃいけなくて。
浜に降りて行って人影やバイクが倒れていないか探している時に、島のおばさんが「どこまで逃げてもここは島なのに」と静かに言いました。
これはほんとうにその通りと思いました。
離島を出ていく人と入ってくる人は同数くらいいましたが、入ってきた中で印象が強かった男性がいました。
30代後半くらいの年恰好で、首に赤いバンダナを巻いていて、西部劇に出ている人のような見た目でした。
新人さんが入ってくると、歓迎を理由にお酒を飲んだりしていたので、この男性とも飲み会をセッティングしました。
カメラマンをされているんですね、この島はは景色がきれいだから、きれいな写真が撮れますか」と、社交辞令で言ったら、このカメラマン氏はフッとため息をついて「フォトグラファーと呼んで欲しいな」と返してきました。

ニュアンスの問題なんだと思いますが、まあなんとなく面倒な人に感じて、それ以上は話しませんでしたが、数日後フォトグラファー氏は離島からいなくなりました。
そうかと思えば、関西弁の陽気なおっちゃんが来たこともありました。
40代半ばくらいのおっちゃんで、朗らかな感じの良い男性だったんですけれど、やっぱり数日後に離島からいなくなりました。
この時は隣の島から警官が来て、ちょっとした騒ぎになりました。
どうもこのおっちゃんは関西にあった家族から逃げて離島に来たらしく、捜索願いが出ていたそうです。
色々な人が出入りしていて、離島の生活はそこまで孤独なものではなかったです。

