彫金アトリエで働き始めて、自分は不器用だしこの仕事は向いていないとすぐに思いました。
そのわりにはクビになるわけでもなかったので最初の3ヶ月を乗り切りました。
最初は金属板を切ったりのパーツ作成みたいな作業をしていましたが、少しずつ全体を通しての作業が増えてきました。
金属板や線を切るところから酸洗い、仕上げまで通しでやっていく作業です。
やってみて分かったのは金属はごまかしが効かないな、ってことです。
0.01ミリの差でも仕上がりに大きな差がついてしまいます。
最初はくっついていたら何でも良いと思っていましたが、ロウの流し方やパーツの配置と、やり直しが効かない作業なので気にして作るようになりました。

彫金アトリエでは15時に全員でお茶を飲む休憩時間がありました。
大体は業務連絡やバザール(デパートなんかの催事で自分たちで売ってくる)の人員配置みたいな話が多かったんですが,滅多にないことなんですが、社長が説教を垂れることがありました。
「おまえら、なにが美しいか美しくないか、よく考えて仕事しろ」と言われたことがありました。
言われた以上の意味はない言葉なんですが、目指すものは「美しさ」なんだと納得しました。
社長は美術系の専門学校の講師をしてお小遣いを稼いで趣味のスポーツカーに注ぎ込んでいたりしたので、私たちに何かを教えたからと言ってお金になるわけでもないので,正面切って教えることは何もなかったようです。
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ただ、「早く、美しく作れ」とか、「ルーティーンで10個作る時には、自分の持っている技術の中から新しいものも1個は作ってみなさい」と言われました。
毎日金属を切ったり貼ったりしていると意外と、ここまでのプロセスは同じでここからはこう言うのもできるな?みたいなアイディアが浮かんできます。
デザインなんてワードを使うほどもない工夫なんですがまったく違う見せ方の新しい商品に発展することもありました。
作ってみたサンプルはとりあえず売ってみて、お客さんの反応が良かったらまた作っていきました。
道具や素材で新しいものに取り組んだときは、応用したサンプルを作る流れができました。
その繰り返しでアトリエの中にはいつも活気があって、美術系専門学校の学園祭準備のような雰囲気がいつもありました。
