謎のまじない師

結婚生活

低カリウム血症で入院した夫の件が落ち着いた頃、夫の実家からお呼び出しがありました。
夫は職場のすぐ隣の賃貸アパートに住んでいますが、車で30分以内のところに彼の両親の家があります。

夫の話では父親を「人医になれないどころか獣医にもなれなかった人。国費留学までしてるのに」と言っていました。
国費留学は戦後間もない頃にアメリカで勉強をしてきたので、優秀な人ではあったのでしょう。

母親の方は小学校の教員を定年まで勤め上げたそうで、夫としては母を悪く言う気持ちはなかったようです。
家のローンはどうもお母さんの名義で通したようです。

実際に夫の父親が何の仕事をしていたのかわかりませんでした。
いつも「牛と豚」みたいな冊子を持ち歩いていました。
獣医関連の仕事はしていたんだと思います。

この両親にわざわざ日時指定で呼び出されて、夫も私も訝しく思いながら実家に向かいました。
実家の前には後ろに羽がついたような豪勢なベンツが停まっていて、「なんだろね?あのベンツ?」と言い合いながら実家に入りました。
居間はきれいに掃除されていて、隣の仏間も同様でした。



いつもと違うのは、部屋の真ん中に袈裟をつけた体の大きなお坊さんが仁王立ちしていたことです。
お坊さんの片手には太いゴールドのバンドのこれみよがしな腕時計が輝いていて、全体的に宗教法人非課税の香りが漂っていて、私としては関わりたくない人種でした。
夫もそこは同じだったようで、何かを両親に言いたそうな顔をしていましたが、お坊さんに座るように言われ、床に正座をしました。
私も仕方なく隣に正座しました。

メンヘラ医

お坊さんは玉串のようなものを夫の頭の上で振り回し、何か唱えた後で両親に紙を所望し、普通のコピー用紙の真ん中に「自律神経失調症」と大きく書き、「いいかい?君の病気はこれだから。私が治るように祈祷しておいたから心配いらないよ。気持ちが傾いたらこの紙を見なさい」とコピー用紙を夫に渡し、両親からは分厚い封筒を受け取ると帰って行きました。

10万円包んでもらったのはコピー用紙一枚。
それも医師でもない坊主に適当な病名をつけられた医者の夫はややムッとして、両親に「もうこう言うことで呼び出すのはやめてほしい」と言っていました。
私も夫の両親があんな胡散臭い坊主に頼るような人たちとは思っていなかったので意外でしたが、人智の及ばぬ智慧の世界で息子を救済してほしいと、藁にもすがる思いだったんでしょうね。

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