入籍して1週間も経たず、夫の言動は急変しました。
すべての言動に愛情と言うか思いやりがなくなりました。
重たい棚が通販で届き、設置するのを手伝ってもらおと夫の帰りを待っていたら「自分で買ったんだから、自分でやりなさい」と言われ、マクドナルドで私がまだ食べていないポテトに手を伸ばして鷲掴みにして「ぼくは頭脳労働者だからブドウ糖が早く減る。
おまえは働いてもいないんだから食わなくていい」と平然と言われました。
最初は夫から私への愛情がなくなったんだと思って混乱しました。
結婚したばかりの夫と離婚したとして、新しい生活をどうやって築いたらいいものやら。
夫の行動はますますおかしくなって、翌朝は午前4時にバロック音楽を大音量でかけて体操をしていました。
「ご近所迷惑になるよ」とボリュームを低くしたら、「貴様、何をする」と、飛んできて私の首を締め始めました。
「貴様など生きてる価値もない。おれは医者だから人間の殺し方なんか熟知している」と言ってました。
ああ、私これから死ぬんだ、残念だったことは性虐待の加害者従兄を提訴できなかったこと、と死ぬつもりでいました。
夫は気まぐれに両手を離し、私の体を蹴ってソファにどすんと座り、朝刊のチラシの中でも健康食品の広告を医薬法的な間違いを探して添削をしていました。
私は黙って寝室に引っ込み、今起こったことを考えていました。
愛情とかの問題じゃなくて、これは「おかしい」。
大体、これまでは主語はぼくで私のことは名前呼びだったのに、いきなり一人称がおれになって、私のことはおまえ、貴様。
暴力だってされたことがないし、そんなそぶりを見せたこともない。
明るくなって図書館へ行き、借りられる限りの精神病に関する本を借りて読み始めました。
夫は仕事に行っている様子でした。
定刻通りに帰宅して、まだ怒りっぽい顔をして胸を張っている夫は、ポロシャツにネクタイを締めていました。
「それ、ヘンだよ」と言いたいのをこらえて夕飯にしました。
夕飯が済むと夫はポロシャツネクタイのまま外出支度を始めたので、さすがにどこへ行くのか尋ねますよね。
「救急病院だ」と言って出かけてしまいました。
救急病院は夫が研修医の時に研修をした病院です。
もちろん彼はすでに研修医ではなく、指導医はもちろん別にいらっしゃいます。
彼はそこで何かしなくてはいけないことがあるわけじゃない。
威張って研修医にあれこれと「指導」をしている様子が目に浮かびました。
一分一秒を大切にしている救急病院で、いくらそこの研修出身とは言え、外部の医師が横からペラペラ言ってきて仕事の邪魔をされるのは迷惑以外の何者でもない。

昼間読んだ本の内容からの感じだと夫は躁状態なんじゃないかと思い、1日2日で収まるものではないし、これ以上救急病院にご迷惑をおかけするわけにはいかないと、夫が睡眠薬をもらってくる薬の袋に書いてあった病院に電話をして、夫の状態を伝えました。
強い催眠効果のある太い注射を持ってきた精神科は、救急病院でセカセカと白衣の下にネクタイを締めてふんぞり返って歩き回る夫に注射をして、昏倒させて捕獲してくれました。
そのまま街外れの精神科に入院となりました。
とりあえず閉鎖病棟です。
入院手続きのためにいくつかの書類にサインをしましたが、中には電気ショック療法の同意書もありました。
入籍したばかりの私は、書き慣れない名字の新しい名前を初めて署名しました。


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